鈑金塗装・デントリペアについて

鈑金塗装について

鈑金塗装は、大きく分けて「鈑金工程」と「塗装工程」によって仕上げる修理方法です。

鈑金工程では、ヘコミや変形した部分を整え、必要に応じてパテを使いながら表面の形を整えていきます。

損傷の状態によっては、既存のパネルを修理するのではなく、パネルそのものを交換することもあります。

その後、下地工程を行ない、塗装工程で色や表面の状態を整え、修理部分を仕上げていきます。

ただし、
「簡易鈑金塗装」や「クイック鈑金塗装」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、鈑金塗装には一つの決まった修理方法があるわけではありません。

鈑金工程では、今あるパネルを生かしてパテなどで形を整える方法、損傷の状態によってはパネルそのものを新品パネルに交換する方法、中古パネルを付け替える方法もあります。

塗装工程についても、できるだけ塗装範囲を抑えて仕上げる方法や、部品の脱着をできるだけ少なくして作業する方法など、いくつかの選択肢があります。

それぞれにメリット・デメリットがありますが、損傷の程度や求める仕上がり、修理にかけられる予算などを踏まえながら、適した方法を検討できることは、鈑金塗装の大きな強みです。

また、ヘコミだけでなく、キズや塗装の剥がれなども含めて修復でき、小さな損傷から大きな損傷まで幅広く対応できることも、鈑金塗装の特徴です。

鈑金塗装のメリット

対応範囲が広い

鈑金塗装は、小さなヘコミやキズから、大きく変形したパネルまで、幅広い損傷に対応できる修理方法です。
大きくへこんだり、パネル全体が変形している場合にも対応できることが、鈑金塗装の強みです。
変形した部分を鈑金作業で整え、必要に応じてパテを使って表面を成形することで、パネルの形を修復していきます。
損傷が大きく、修理するよりも交換したほうが適している場合には、パネルそのものを交換する方法を選ぶこともできます。

キズや塗装損傷まで直せる

鈑金塗装では、ヘコミだけでなく、キズや塗装の剥がれなども含めて修復することができます。
表面のキズが深く、下地や金属部分まで傷んでいる場合には、必要な下地処理を行ったうえで新しく塗装して仕上げます。
ヘコミとキズが一緒にできてしまった場合でも、外観をまとめて整えることができるのは、鈑金塗装の大きなメリットです。

車体の骨格部分まで修理できる

事故などで損傷が大きく、外板のパネルだけではなく、車体の骨格部分まで変形している場合にも、鈑金塗装で対応できることがあります。
専用の設備を使って車体の寸法や歪みを確認し、骨格部分を修正したり、損傷した部位を交換・溶接したりしながら車体を整えていきます。
こうした修理には、外板の鈑金塗装とは異なる設備や高い技術が必要になるため、すべての鈑金工場で同じように対応できるわけではありません。
外観のヘコミやキズだけでなく、車体の骨格部分まで含めて修復できることも、鈑金修理の大きな特徴です。

鈑金・交換など方法を選べる

鈑金塗装は、一つの決まった直し方があるわけではありません。
損傷の程度が比較的小さければ、今あるパネルを鈑金やパテで成形し、大きく変形している場合にはパネル交換を選ぶなど、状態に応じて方法を変えることができます。
新品部品に交換することが常に最善というわけでもなく、今あるパネルを修理したほうが費用や車両価値の面で適している場合もあります。
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、損傷の状態や求める仕上がりに合わせて選べることが、鈑金塗装の良いところです。

条件によっては補修範囲や費用を抑えられる

鈑金塗装では、損傷している場所やパネルの形によっては、塗装する範囲を必要な部分だけに抑えられる場合があります。
また、損傷の大きさだけでなく、どこまでの仕上がりを求めるのか、予算をどのくらいかけるのかなどを考えながら、修理方法を選べることも鈑金塗装の大きな特徴です。

鈑金塗装のデメリット

元の塗装を残せない

鈑金塗装では、修理する部分の表面を削ったり、下地処理をしたりしたうえで、新しく塗装をして仕上げます。
そのため、修理した部分については、新車時からの塗装をそのまま残すことはできません。
きれいに修復できることが鈑金塗装の良さである一方で、オリジナルの塗装を残したい場合には、知っておきたい特徴の一つです。

塗装範囲が広がる場合がある

ヘコミやキズがある部分だけを塗装すればよいとは限りません。
修理した部分と周囲の色の違いを目立ちにくくするため、隣接する部分へ塗料をぼかしたり、場合によっては隣のパネルまで塗装したりすることがあります。
これは仕上がりを自然にするために必要な工程ですが、実際の損傷よりも広い範囲が補修塗装されることがある点は、あらかじめ知っておきたいところです。

色・肌を完全に同じにすることには限界がある

鈑金塗装では、現車の色に合わせて調色し、できるだけ自然になじむように仕上げます。
しかし、新車時の塗装と修理時の補修塗装では、塗装する環境や使用する材料などが異なります。
そのため、色だけでなく、艶や塗装面の細かな質感まで含めて、新車時と完全に同じ状態を再現できるとは限りません。
見る角度や光の当たり方によって、わずかな違いを感じることもあります。

仕上がりが技術に左右される

鈑金塗装は、単にヘコミを埋めて色を塗るだけの作業ではありません。
パネルの形を整える鈑金、パテによる成形、下地処理、調色、塗装、磨きなど、多くの工程によって仕上がりが決まります。
どの工程も技術や経験が必要で、パネルの形状や色、塗装面の質感などをどこまで自然に仕上げられるかは、施工する人や工場によって違いが出ることがあります。
どこに依頼するかも、修理方法と同じくらい大切な判断材料の一つです。

工程が多く時間・費用がかかる場合がある

鈑金塗装では、部品の脱着、鈑金、パテによる成形、研磨、下地処理、調色、塗装、乾燥、磨きなど、複数の工程が必要になります。
損傷が大きくなるほど作業工程も増え、パネル交換や周辺部品の脱着が必要になれば、修理にかかる時間や費用も大きくなることがあります。
一方で、小さな損傷で補修範囲を抑えられる場合には、比較的短時間・低価格で対応できることもあるため、損傷状態によって修理日数や費用は大きく変わります。

修理場所・方法によっては将来の車両評価にも関係する

ヘコミやキズをきれいに直したからといって、必ずしも損傷前と同じ車両価値に戻るとは限りません。
どの部分を修理したのか、パネルを交換したのか、車体の骨格部分まで修理しているのかなどによって、将来の査定や売却時の評価が変わることがあります。
ただし、鈑金塗装やパネル交換をしたからといって、すべてが「修復歴車」になるわけではありません。
修復歴に該当するかどうかと、査定や車両評価への影響は別の話として考える必要があります。
車を長く乗るのか、将来売却する予定があるのかによっても、修理方法を選ぶ基準は変わってきます。

デントリペアについて

デントリペアは、単純にヘコミを裏側から押し出すだけではありません。
ヘコミができると、中央部分が低くなるだけではなく、その周囲にも力が加わり、部分的に盛り上がりや歪みが生じることがあります。

デントリペアでは、こうしたパネルの変化を確認しながら、少しずつ全体の形を整えていきます。

パネルの裏側へ工具を入れられる場合は、専用工具を使い、裏側から少しずつ押して調整します。
一方、裏側から工具を入れることが難しい場合には、表側から引き出す方法を使うこともあります。

また、それだけではなく、高くなった部分を表側から調整するなど、低いところと高いところを少しずつ整えながら、パネル全体の面を自然な形へ近づけていきます。

このように、塗装をせずに金属そのものの形をパネルの歪みを見極めながら細かく調整することで、精度の高い仕上がりを目指せることが、デントリペアの大きな特徴です。

ただし、すべてのヘコミに対応できるわけではなく、ヘコミの大きさや深さ、場所、塗装の状態などによっては、鈑金塗装のほうが適していると判断されることがあります。

デントリペアの工程イメージ

STEP 1

STEP 2

STEP 3

STEP 4

デントリペアのメリット

元の塗装を残せる

再塗装をしないため、修理によって新たな色の違いや塗装面の艶の違いが生まれにくいこともメリットです。
鈑金塗装では現車に合わせて調色し、周囲になじむように塗装しますが、デントリペアでは元の塗装そのものが残ります。
そのため、調色やぼかし塗装による色の違い、艶の違いを新たに作らずに修理することができます。
見た目をきれいにするだけでなく、できるだけ元の状態を残しながら修理できることが、デントリペアの大きなメリットです。

金属そのものの形を細かく整えられる

デントリペアでは、パテや塗装で形を整えるのではなく、塗装の表面に映る歪みを確認しながら、金属そのものの形を細かく整えていきます。
低い部分を押したり、高くなった部分を調整したりしながら、パネル全体の面を少しずつ自然な形へ近づけていくため、精度の高い仕上がりを目指すことができます。

比較的短時間で修理できる場合がある

パテの乾燥や下地処理、塗装、乾燥といった工程がないため、鈑金塗装と比べて短時間で修理できる場合があります。
比較的小さなヘコミで工具が入りやすい場所であれば、数時間で施工できることもあります。
ただし、ヘコミの数や大きさ、場所、パネルの構造などによって施工時間は大きく変わります。

修理費用を抑えられる場合がある

パテや塗料を使用せず、塗装工程も必要ないため、条件によっては鈑金塗装より修理費用を抑えられる場合があります。
部品を交換せず、元のパネルをそのまま使用できることも、費用を抑えられる理由の一つです。
ただし、ヘコミの数や大きさ、部品の脱着が必要かどうかなどによって費用は変わるため、デントリペアなら必ず安くなるとは限りません。

元のパネルを残せる

デントリペアでは、損傷したパネルを交換せず、今あるパネルをそのまま使って修理をします。
状態によっては、鈑金塗装でパネル交換が検討されるようなヘコミでも、デントリペアで修復できる場合があります。
元のパネルと元の塗装の両方を残せる可能性があることは、できるだけ車のオリジナルの状態を保ちたい場合に大きなメリットとなります。

雹による多数のヘコミにも対応できる

デントリペアは、エクボやドアパンチだけではなく、雹によってできた多数のヘコミにも使われる修理方法です。
ボンネットやルーフ、ドアなどに数多くのヘコミができた場合でも、それぞれの状態を確認しながら一つずつ修復していきます。
条件が合えば、広い範囲を鈑金・再塗装したり、多くのパネルを交換したりせずに、元のパネル・元の塗装を残したまま修理できることがあります。

鉄だけでなくアルミパネルにも対応できる

デントリペアは、一般的な鉄製のパネルだけでなく、アルミ製のパネルにも施工できる場合があります。
ただし、鉄とアルミでは金属の性質が異なるため、同じヘコミであっても施工方法や難易度は変わります。
材質に合わせた知識や技術が必要になりますが、さまざまな素材のパネルに対応できることもデントリペアの特徴です。

デントリペアのデメリット

キズや塗装の損傷までは直せない

デントリペアは、パネルの形を整える修理です。
そのため、ヘコミと一緒にできたキズや塗装の剥がれ、割れなどを直すことはできません。
ヘコミを修復できたとしても塗装の損傷はそのまま残るため、キズまできれいに直したい場合には、鈑金塗装が適していることがあります。

施工できるヘコミには限界がある

デントリペアでは、すべてのヘコミが修理できるわけではありません。
大きさだけでなく、深さや鋭さ、金属の伸び、折れ方などによって、どこまで元の形へ近づけられるかが変わります。
見た目には小さなヘコミでも施工が難しい場合がある一方、大きく見えるヘコミでも状態によっては施工できることがあります。
大きさだけではなくヘコミの状態そのものを確認することが大切です。

工具が届くかどうかに左右される

デントリペアでは、パネルの裏側から専用工具を使って押し出す方法が多く使われます。
しかし、パネルの内部には補強材があったり、二重構造になっていたりするため、ヘコミの裏側まで工具を入れられないことがあります。
その場合には表側から引き出す方法を使うこともありますが、工具が届くかどうかは施工方法や難易度を左右する大切な条件です。

ヘコミの場所によって難易度が変わる

同じ大きさのヘコミでも、できた場所によって施工の難易度は大きく変わります。
比較的平らな場所にできたヘコミと、プレスラインやパネルの端、補強材付近にできたヘコミでは、金属の動き方や工具を使える条件が異なります。
施工できないと単純に決まるものではありませんが、場所によって仕上がりや必要な時間が変わることがあります。

塗装の状態によって施工できないことがある

デントリペアは元の塗装を残す修理だからこそ、その塗装の状態も重要になります。
すでに塗装が割れていたり、劣化していたりする場合には、ヘコミを動かすことで塗膜に影響が出る可能性があります。
また、一度補修塗装されているパネルでは、元の塗装とは状態が異なることもあります。
ヘコミだけでなく、施工前に塗装の状態まで確認することが大切です。

仕上がりが施工者の技術や経験に左右される

デントリペアは、単純にヘコミを裏側から押し出すだけの作業ではありません。
ヘコミによって生じた低い部分や高い部分、金属に残っている力を見極めながら、細かな調整を繰り返してパネル全体の面を整えていきます。
どこまで自然な形へ近づけられるかは、ヘコミの状態だけでなく、施工する人の技術や経験にも左右されます。
そのため、どのショップにに依頼するかも大切な判断材料の一つです。

必ず安く、早く修理できるとは限らない

デントリペアには「安く、早く直せる」というイメージがありますが、すべてのヘコミに当てはまるわけではありません。
ヘコミの数や大きさ、複雑な変形、工具が入りにくい場所、アルミパネルなどでは、施工に時間がかかることがあります。
また、施工するために内張りや周辺部品の脱着が必要になれば、その分の作業も増えます。
鈑金塗装と比べて費用や時間を抑えられることはありますが、ヘコミの状態によって変わると考えておくことが大切です。

パネル裏側の防錆処理への配慮が必要

パネルの裏側から工具を使って施工する場合には、表側の塗装だけでなく、裏側の状態にも配慮する必要があります。
工具の使い方によっては、パネル裏側に施されている防錆処理や保護材に影響を与える可能性があるためです。
施工によって防錆処理を傷めた場合には、必要に応じて適切に補修することも、長く車を使用するうえでは大切な工程になります。

工具を入れるための穴を開ける選択もある

パネルの裏側へ工具を入れられない場合でも、工具を入れるためだけに車体へ安易に穴を開ける方法は避けるべきだと考えています。
特に車体の構造に関わる部分へ穴を開ければ、本来の状態を変えてしまうことになります。
既存のサービスホールを利用したり、必要な部品を脱着したり、表側から引き出す方法を検討するなど、車体をできるだけ傷めない方法を選ぶことが大切です。

完全な新車時の状態を約束できる方法ではない

デントリペアは、元の塗装やパネルを残しながら高い精度でヘコミを修復できる方法です。
しかし、金属が強く伸びている場合や、深い折れがある場合など、ヘコミの状態によってはわずかな歪みや痕跡が残ることがあります。
塗装をしないからといって、どんなヘコミでも新車時と完全に同じ状態へ戻せるわけではありません。
デントリペアにも、できることとできないことがあります。
だからこそ、施工できるかどうかだけではなく、どの程度の仕上がりを目指せるのかまで確認したうえで、修理方法を選ぶことが大切です。

鈑金塗装とデントリペアの比較

鈑金塗装とデントリペアは、どちらもヘコミを修理する方法ですが、その工程や考え方には大きな違いがあります。

この違いによって、対応できる損傷だけでなく、費用・修理時間・仕上がりや修理後の車両価値にも違いが生まれます。
それぞれの特徴を比較してみましょう。

スクロールできます
鈑金塗装デントリペア
修理方法パテ・溶接・パネル交換・塗装などで外装を整える塗装せず、ヘコミを整える
向いている症状傷・塗装はがれ・大きな損傷を伴うヘコミ小さなヘコミ・エクボ・ひょうによるヘコミ
費用損傷範囲・修理内容によって費用が大きく変わる比較的抑えられることが多いが、ヘコミの数、大きさによって変わる
修理時間工程が多く、乾燥時間も必要なため日数がかかることがある比較的短いことが多いが、ヘコミの数、難易度によって変わる
修復歴との関係骨格部分まで修正・交換している場合など、修理した場所や内容によって修復歴の扱いが変わる外板のヘコミをデントリペアで修理しただけでは、通常は「修復歴車」には該当しない
査定・車両評価修復歴に該当しなくても、再塗装やパネル交換などが査定・車両評価に影響する場合がある外板のヘコミ修理だけでは通常影響しないが、損傷の状態や部品の脱着内容によっては評価に影響する場合がある
メリット傷・塗装はがれ・広範囲の損傷にも対応しやすいオリジナルの塗装やパネルを残し、精度の高い仕上がりを目指すことができる
注意点塗装を伴うため、色合わせや修理跡の見え方に注意が必要施工できるヘコミには限りがあり、塗装の状態によっては施工中に割れや損傷が生じる可能性もある
おすすめのケース傷や塗装ダメージも含めてしっかり直したい場合軽度なヘコミ・できるだけ元の状態を残したい場合

修理の考え方が違う

鈑金塗装もデントリペアも、傷んだ車を修復するための方法です。
ただし、同じ「ヘコミを直す」という目的でも、その考え方や工程には大きな違いがあります。

鈑金塗装では、変形した部分を鈑金し、必要に応じてパテで表面を整え、新しく塗装することで仕上げていきます。
損傷が大きければ、パネルそのものを交換することもあります。

一方、デントリペアでは、オリジナルの塗装とパネルを残したまま金属そのものの形を細かく整えていき、精度の高い仕上がりを目指します。

鈑金塗装には、キズや塗装の損傷まで含めて幅広く修復できる良さがあります。
デントリペアには、元の塗装やパネルを残しながら修理できる良さがあります。

どちらか一方がすべての面で優れているわけではありません。

直すだけではなく、何を優先するか。

そこまで考えると、後悔のない修理方法も見えてくると思います。

何をもって「直った」と考えるか

ヘコミがなくなり、見た目がきれいになれば「直った」と考えることもできます。
一方で、新車時からの塗装が残っていることや、元のパネルがそのまま使われていることを大切にする方もいると思います。

また、見た目だけではなく、その後の車両価値まで含めて考えることもできます。

同じ「直す」という言葉でも、何を大切にするかによって、その意味は少しずつ違います。

だからこそ、直すことだけを見るのではなく、「修理によって何が直り、何が変わり、何が残ったのか」まで知ったうえで修理方法を考えることが大切だと思います。

修理後の車両価値については、次のページでさらに詳しくご説明します。